歴史そのものは、これまでも勉強してきたし今も学んではいます。
……ところが、この本を読んでいると、その「つもり」が何度も裏切られるんです。
「えっ、そういう意味だったの?」
「それ、教科書ではそんなふうに扱ってなかったはずだが……」
そんなことが、出てくるわ、出てくるわ(笑)
今回読んだのは、出口治明さんの『一気読み日本史』。
でも、教科書やテキストで学んでいると、どうしても出来事や人物を一つひとつ覚えることが中心になりがちです。
だから今回は、日本史を一度「最初から最後まで」眺め直してみようと思いました。
ところが読み始めてみると単なる復習ではなく、「自分が知っていると思っていた日本史って、実はかなり『物語化』されていたのかもしれない」
そんなことを再認識させられたのです。
普段は紙の本にはほとんど線を引かない私なんですが、今回は珍しくシャーペンを手に取りました。
「ここは面白い」
「これは知らなかった」
「いや、ちょっと待て。オレ、思い違いしてたかも」
そう思ったところに線を引きながら、もう一度読み直す。
もちろん、この本に書かれていることがすべて唯一の正解だとは思っていません。
歴史にはさまざまな説や解釈があります。
それでも、「こういう見方をすると、今まで知っていた歴史がこんなふうに見えるのか」
という発見が、この本にはたくさんありました。
今回は、その中でも特に「これは知らなかった!」と思ったものを、いくつか拾ってみたいと思います。
①「知っているつもり」だった日本史の知識が、次々とひっくり返る
例えば「朝貢貿易」。
私は、中国に貢物を持っていき、その見返りとして中国の庇護を受ける、というイメージを持っていました。
ところが出口さんの説明では、これを「威信財貿易」という側面から見る。
つまり、プレゼント合戦のようなもの。
「相手よりも豪華なものを返せる国のほうが偉い」というわけです。
これだけで、ずいぶん景色が変わります。
大化の改新の「公地公民」もそう。
「土地や人民は天皇や豪族の私有物ではなく、国家のものになった」と覚えていましたが、実際には私有地も残されていました。
そう考えると、蘇我氏がなぜ力を持つことができたのかも、少し分かりやすくなります。
さらに、六波羅探題がもともとは平清盛の邸宅だったこと。
富士川の水鳥の羽音や、鵯越の逆落としについても、後世に語られた物語と実際の出来事には違いがあること。
「刀狩」も、刀を片っ端から没収したというより、武力行使を禁止する意味合いが大きかったこと。
歴史用語や有名なエピソードから、私たちは知らないうちに勝手に意味づけして「分かったつもり」になっているのかもしれません。
② 日本史を「世界の中」で見ると、また違って見える
この本を読んで特に面白かったのが、日本史を日本だけで見ないことでした。
例えば元寇。
日本から見ると「元が日本を侵略してきた」という話ですが、元側から見ると、南宋を征服した後の軍人たちに仕事を与え、反乱を防ぐ意味もあった。
つまり、日本への侵攻もモンゴル帝国の周辺諸国への拡張政策の一環だったというわけです。
そして弘安の役についても、「神風で元軍が自滅した」というだけではなく、暴風雨があったうえで、日本軍の猛攻を受けて撤退したという見方もある。
さらに興味深かったのが、日本の経済力についてです。
古代から鎌倉時代にかけての日本は、世界的に見れば決して豊かな国ではなかった。
ところが戦国時代に銀が大量に産出され一気に富裕化した経緯を考えると、豊臣秀吉の朝鮮出兵や明征服構想も、「あながち秀吉が無謀だったとは言えない」と出口氏も本文中で述べておられますよ。
その後、鎖国によって産業革命や国民国家化など世界の大きな潮流から取り残され、その遅れを取り戻そうとしたのが明治維新だった、と見ることもできるとのこと。
日本史を日本の中だけで眺めるのではなく、世界の動きの中に置いてみる。
それだけで、出来事の意味がずいぶん変わってくるのです。
③ 歴史も人間関係も、「一方向から見ない」
もう一つ印象に残ったのが、歴史上の人物や出来事を見る「立ち位置」の大切さです。
鎌倉幕府の二代執権・北条義時。
おそらくは「承久の乱のときの執権」という程度の認識の方も少なくないでしょう。
でもよく考えてみると、この人物は朝廷に弓を引き、三人の上皇を島流しにし、天皇まで廃している。
皇国史観から見れば、そりゃ「逆賊」と言われても不思議ではありません。
同じ人物でも、どこから見るかで評価が変わる。
領事裁判権の撤廃も同じです。
単純に「不平等条約を改正した」と覚えていましたが、外国人の日本国内での居住を認める「内地解放」と引き換えに、日本の裁判権に従ってもらおうとしたという背景がある。
石油危機も、「日本が大変な目に遭った」で終わらない。
西側諸国が大きな影響を受ける一方、省エネルギーの工夫や技術革新が進み、それが結果として東側諸国との差を広げることにもつながった。
一つの出来事にも、その時点では見えない背景や、その後の影響があります。
だからこそ、「この人はこういう人」または「この事件はこういう事件」と決めつける前に、少し違う場所から眺めてみる。
これは歴史だけではなく、人間関係にも通じることなのかもしれません。
本日のまとめでーす!
『一気読み日本史』を読んで感じたのは、歴史の知識が増えたことだけではありません。
「知っているつもり」を一度疑ってみること。
そして、違う立場や違う時代から眺めてみること。
そうすると、今まで見えていなかったものが見えてくる。
これは、私が心理学や人との関わりについて考えていることとも、どこかつながっている気がします。
……まあ、それにしても、「遺伝子の多様性」「朝貢貿易」「公地公民」「承久の乱」「元寇」「銀」「産業革命」「領事裁判権」……。
頭を使う話が続くのは紛れもない事実なんですよ(笑)。
そんな中で、出口さんが書く文章に「まだましや」とか、「~は許さへんで」のような関西弁が出てくる。
三重県出身ですから、文化的な区分は中部地方だと分かっておりますよ。
それでも関西に縁のある私としては、「おお、なんかホッとするなあ(笑)」と感じたんだね。
歴史を読み直しつつもホッとしながら読み進めることができる。
あなたが歴史好きならばお薦めしたい、そんな一冊でした。
https://bookplus.nikkei.com/atcl/catalog/25/12/05/02362

