はじめの一歩を踏み出そう 第99回 コーチングとカウンセリングは「同時にはできない」?~支援者が抱える「役割葛藤」という心理~

『コーチングとカウンセリングは何が違うのですか?』という質問を受けることがあります。しかし現場では、その違い以上に大切な問題があります。

今日はこのテーマを軸にお話ししていきましょう。

『コーチングとカウンセリングは何が違うのですか?』という質問を受けることがあります。しかし現場では、その違い以上に大切な問題があります。
今日はこのテーマを軸にお話ししていきましょう。

「寄り添いたい。でも結果も出さなければならない」

ある友人の話です。

彼は教育大学でスポーツ科学を学び、小中学生を指導するスポーツクラブのコーチとして長年活躍してきました。

その後、子どもとの関わり方をもっと深く学びたいと考え、心理学を学び、現在ではカウンセラーとしても活動しています。

そんな彼がある日、こんな悩みを打ち明けてくれました。

「心理学を学んだからこそ苦しくなった。」

私は最初、その意味が分かりませんでした。

1.バットは振れるが、守備練習になると崩れてしまう ~「困った子」ではなく「困っている子」~

彼のチームに新たに入ってきたのはADHDの診断を受けている小学4年生。

バッティングになると驚くほど集中する。

順番が来ても、なかなかバッティングマシンを譲らないほど夢中になるぐらいなんだとか。

ところが守備練習になると様子が一変する。

他の子どもたちとの連携が難しいし、細かな注意が続かない。

うまくいかない理由もうまく言葉にできない。

そしてうまくいかないことから怒りが爆発し、道具を投げたり、物を壊したりしてしまう。

※もちろん、ADHDのあるお子さん全員にこのような行動が見られるわけではありません。このケースはその一例にすぎないということをご承知おきください。

当然、周囲の子どもたちは怖がり、距離を置くようになっていく。

彼は知っていました。

守備がうまくいかなかったときに必ず爪を噛む、つまり自傷行為が見られることを。

この子は「わざと暴れている」のではない、困っているのだと。

だからこそ話を聴いてあげたいし、気持ちを整理する時間を作ってあげたい。

でも……

2.他の20人も待っている~コーチの抱える「結果を出す」という役割~

ここで現実が立ちはだかることに。

練習は一人のためだけに行われているわけではありません。

他にも指導を待つ子どもたちがいる。

当然、限られた時間の中で、技術も教え、チーム全体も見なければならない。

つまり、カウンセリングできる彼はコーチでもあるということだね。

「どう思う?」より、「ここはこうしなさい」と伝えなければならない場面も多くあります。

3.心理学でいう「役割葛藤」~二つの帽子は同時にはかぶれない~

心理学には役割葛藤(Role Conflict)」という考え方があります。

一人の人が、異なる役割を同時に求められることで葛藤が生まれる状態ですね。

例えば、

・管理職として成果を求められる⇔部下には寄り添いたい

・親として優しく接したい⇔時には厳しく叱らなければならない

どちらも間違いではありません。

でも、同じ瞬間に100%行うことは難しいのは言うまでもありませんよね。

4.あの世界が注目する大谷翔平選手ですらも打席では投手になれない~一つの役割に集中するから力を発揮できる~

私はこの話を聞いていて、ふと大谷翔平選手を思い浮かべた。

どれだけ二刀流で世界を驚かせても、バッターボックスに立っている瞬間、投手として配球を考えながら打席に立つことはまずありえない。

その瞬間は、打者として集中しています。

支援も同じです。

コーチならコーチ。

カウンセラーならカウンセラー。

どちらも大切ですが、同じ瞬間に二つの役割を完璧に果たすことは、とても難しいのです。

5.だからこそ「チーム」で支える~だから一人で抱え込まなくていい~

ではどうすればいいのでしょう。

私は、友人が失敗しているとは全く思っていないんです。

むしろ、自分だけでは支えきれないことを理解しているからこそ、悩んでいる。

コーチは日頃から子どもを観察するし、その変化に気付く。

その情報をカウンセラーへ伝える。

カウンセラーは、安心して話せる場を作り、本人の気持ちを整理していく。

そして、保護者や学校とも連携する。

このように、それぞれが役割を果たす方が、結果として本人にとって一番良い支援になります。

本日のまとめでーす ~どんな支援も「一人のスーパーマン」が行うものではない~

心理学を学ぶことは、とても大切です。

一方で、もっと大切なのは、今の自分が担う役割を理解すること。

そして、自分一人では難しいと感じたとき、別の専門家へつなぐ勇気を持つことです。

教育現場でも、スポーツでも、企業でも同じだと思うんですよ。

管理職だから、先生だから、親だから…。

何でも一人で抱え込まなくていい。

支援とは、一人のスーパーマンが頑張ることではありません。

それぞれの専門性を持った人たちが、チームとして一人の人を支えること。

私は、それこそが本当の支援なのではないかと思っているんです。

だからこそこんな細かいこと(個人的な悩みなど)とあきらめず、お近くにいる信頼できる専門家や相談相手に相談してみてはいかがでしょう?

いらっしゃらなければ我々のような心理職にお声がけください。

それだけでも、あなたのかけがえのない味方が増えることにもつながるのだから。

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この記事を書いた人

教育業界に20年以上携わってきましたが、気づかぬうちににストレスで潰されそうに。そんな時に偶然に出会ったNLP心理学によって物事の捉え方が大きく変わりました。一歩前に進めるスイッチの押し方により人生が音を立てて動き出す。そんな実感を一人でも多くの方と共有していきたいと思います。

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