はじめの一歩を踏み出そう 第108回 「やったつもり」が一番こわい ~電子レンジの中身が消えた日~

先日、オフィスで昼ごはんを食べようとしていた時のお話。
優雅なランチタイムではない。この後の予定はぎちぎち。

やることは次から次へと降ってくる。
正直、「昼ごはん食べてる場合か?」状態。

でも、ここで食べておかないと、この先6〜7時間は何も口にできない。
これはもう、「食べるか、食べないか」の話じゃない。

「今食べなきゃ、後で詰む」の話である。

冷凍庫からワンプレートの冷凍食品を取り出す、包装を外す。

ここまでは完璧。
その間も、頭の中ではすでに次の仕事が始まっていた。

「食べ終わったらあれをやらな」
「いや、あれってどうなってたっけ」
「そうだ、○○さんにも確認せな」

身体は昼ごはんの前にいるのに、頭はもうこれからのビジネスのなか。

そんな状態で電子レンジのスイッチを押した。
チーン♪
「よし!」
勢いよく扉を開けた。

すると、……ない、冷凍食品が、なーい!!

電子レンジの中には、何もない。

空間ごと消えている。
手品か?異世界に送られたのか?

……、いや違う。

答えはシンプルだった。

包装を外したところまではやった。

でも、冷凍食品を電子レンジに入れず、そのまま冷凍庫に戻していた。
にもかかわらず、私の頭の中では「入れた」ことになっていた。

だから普通にスイッチを押し、普通にチーン♪を聞き、普通に「さあとっとと食べよう」とはやる気持ちで扉を開けた。

……いったい、何を温めてたんや。

目次

笑って終わらせようと思ったら、背筋が凍った

「いやあ、忙しいとこんなこともあるわな」と笑って片付けようとした。
ところが、ふと気づいてしまった。

「あれ? これ、先日の失敗と同じちゃうか?」

先日、私はある方との約束を失念してしまった。

スケジュールも確認していたし、「この日にやる」とちゃんと認識していたのに、実際にはその約束が頭からすっぽ抜けてしまった。

謝罪メールを書き、責任者にも頭を下げた。

詳細は前回の記事に書いた通り。

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あのときは「なんで、ちゃんと確認してたのに……」としか思えなかった。

でも、電子レンジ事件を思い出して、その仕組みが少し見えてきた。

「やるべきことを知らなかった」わけじゃない。

ちゃんと知っていたし、予定も確認していたし、行動も始めていた。

ところが、その最中に頭が次のタスクへ飛んでいた。

これや!

電子レンジ:冷凍食品を温める → 頭が次の仕事へ → 「温め終わった」ことになっている → チーン♪ → 「食べよう!」→ 空っぽ

仕事:約束を確認する → 実際の作業へ → 頭が次々の仕事へ → 「あれはもう大丈夫」になっている → 未完了発覚

電子レンジは笑えるが、こっちは笑えない。
でも、構造はまったく同じなのでは…と、気づいてしまった。

頭は「次」へ行きたがる

ここからは少し真面目な話。

人間の注意には限りがある。

やることが多く時間に追われていると、「今やっていること」より「次にやること」に注意が向きやすくなる。

人間工学やヒューマンエラー研究では、意図したことと実際の行動がずれてしまう「スリップ(slip)」というエラーが知られている。
「やろうと思っていたこと」は間違っていないのに、実際の行動の途中で注意がそれて、別の行動をしてしまう。

習慣化された行動に引っ張られる「キャプチャーエラー」も、その一つだ。

先を読んで動こうとすること自体は、もちろん悪いことではない。
ただ、忙しさや時間的なプレッシャーが重なると、誰にでもこうしたミスは起こり得る。

これは別に、能力が低いとか、不注意な性格だとか、そういう話ではない。

たとえば受験生でも、「あと何分だろう」「次の問題は何かな」と頭が先に行ってしまい、「あてはまるものを選べ」のはずが「あてはまらないものを選べ」を見落とす、なんてことが起きる。

能力の差ではなく、頭が一歩先に走ってしまっただけなのだ。

問題は、「次のタスクを考えること」と「今のタスクを終えること」が同時に起きたとき。ここで「始めた」「やった」「終わった」が頭の中で混ざってしまう。

だから今回の私は、「冷凍食品を電子レンジに入れる」を実際にはやっていないのに、頭の中では完了したことになっていた。

身体は「今」にいるのに、頭はもう「次」にいた。

「落ち着け」ではなく、無意識に仕事をしてもらおう

「気をつける」だけでは弱い。忙しいときほど、頭の中はもっと忙しいから。

① 「次にやること」を頭から外へ出す
「あ、○○さんに確認せな!」と思ったら、頭の中で抱え続けずにまずメモする。

「書いたから、今はこっち」と戻る。

頭の中のTODOを外に置くだけで、今の行動に使える注意が戻ってくる。

② 「完了確認」を型にしてしまう
「ちゃんと終わったかな?」と毎回意識するのではなく、「ここまでやったら完了」という型を先に決めておく。
メールなら:書く→宛先確認→添付確認→送信→完了
仕事なら:実施→記録→報告→完了
冷凍食品なら:包装を外す→冷凍食品を電子レンジに入れる→スイッチを押す→完了(これを忘れたのが今回の私である)

③ 「次へ行きたい無意識」を敵にしない
次へ行きたがる自分に気づいたら、「よし、次へ行こうとしてるな」とまず認める。

そのうえで「じゃあ、今の仕事をここまで終わらせてから行こう」と条件をつける。

無意識を止めるのではなく、無意識に一言条件を添える。これがコツ。

④ 時間がないときほど「小さな完了」を作る
忙しいと「全部終わらせなきゃ」となって、頭の中が渋滞する。だから「まずここまで」と小さく区切る。一つ終わる→次へ行く。結果的にこっちの方が速い。

失敗は「自分を責める材料」ではなく「自分を知る材料」

冷静に考えると、めちゃくちゃアホな話である。

電子レンジを開けたら、昼ごはんがない。

こんなことを堂々とブログに書いている自分もどうかしている(笑)

でも、このアホな失敗のおかげで、先日のビジネスでの失敗との共通点に気づけた。

自分を分析すると、「次へ進もうとする力」が強い。

これ自体は悪くない。

短い時間でも「これもやらな」「少しでも前に進もう」と動く原動力でもある。

ただ、強くなりすぎると、今やっていることを置き去りにしてしまう。

だからこれからは、「次へ行こう!」と思った自分に、こう声をかけようと思う。
「ええで。でも、その前に今の仕事を完了させよう」
電子レンジになら、「おい、まず冷凍食品を入れろや」である。

……こんな当たり前のことを、私は電子レンジに教わった(笑)

これを読んでいるあなたにも、一度問いかけてみてほしい。
「急いでいるときほど、頭が先に行ってないかな?」

頭が先に走ってしまうのは、誰にでもある。

だからこそ「落ち着け」ではなく、「今、ここまで終わった?」と確認してみること。

それだけで、次の失敗を一つ減らせるかもしれない。

それもまた、「はじめの一歩」を確実に前へ進めるための、小さな工夫なのかもしれないね。

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この記事を書いた人

教育業界に20年以上携わってきましたが、気づかぬうちににストレスで潰されそうに。そんな時に偶然に出会ったNLP心理学によって物事の捉え方が大きく変わりました。一歩前に進めるスイッチの押し方により人生が音を立てて動き出す。そんな実感を一人でも多くの方と共有していきたいと思います。

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