先日、オフィスで昼ごはんを食べようとしていた時のお話。
優雅なランチタイムではない。この後の予定はぎちぎち。
やることは次から次へと降ってくる。
正直、「昼ごはん食べてる場合か?」状態。
でも、ここで食べておかないと、この先6〜7時間は何も口にできない。
これはもう、「食べるか、食べないか」の話じゃない。
「今食べなきゃ、後で詰む」の話である。
冷凍庫からワンプレートの冷凍食品を取り出す、包装を外す。
ここまでは完璧。
その間も、頭の中ではすでに次の仕事が始まっていた。
「食べ終わったらあれをやらな」
「いや、あれってどうなってたっけ」
「そうだ、○○さんにも確認せな」
身体は昼ごはんの前にいるのに、頭はもうこれからのビジネスのなか。
そんな状態で電子レンジのスイッチを押した。
チーン♪
「よし!」
勢いよく扉を開けた。
すると、……ない、冷凍食品が、なーい!!
電子レンジの中には、何もない。
空間ごと消えている。
手品か?異世界に送られたのか?
……、いや違う。
答えはシンプルだった。
包装を外したところまではやった。
でも、冷凍食品を電子レンジに入れず、そのまま冷凍庫に戻していた。
にもかかわらず、私の頭の中では「入れた」ことになっていた。
だから普通にスイッチを押し、普通にチーン♪を聞き、普通に「さあとっとと食べよう」とはやる気持ちで扉を開けた。
……いったい、何を温めてたんや。
笑って終わらせようと思ったら、背筋が凍った
「いやあ、忙しいとこんなこともあるわな」と笑って片付けようとした。
ところが、ふと気づいてしまった。
「あれ? これ、先日の失敗と同じちゃうか?」
先日、私はある方との約束を失念してしまった。
スケジュールも確認していたし、「この日にやる」とちゃんと認識していたのに、実際にはその約束が頭からすっぽ抜けてしまった。
謝罪メールを書き、責任者にも頭を下げた。
詳細は前回の記事に書いた通り。

あのときは「なんで、ちゃんと確認してたのに……」としか思えなかった。
でも、電子レンジ事件を思い出して、その仕組みが少し見えてきた。
「やるべきことを知らなかった」わけじゃない。
ちゃんと知っていたし、予定も確認していたし、行動も始めていた。
ところが、その最中に頭が次のタスクへ飛んでいた。
これや!
電子レンジ:冷凍食品を温める → 頭が次の仕事へ → 「温め終わった」ことになっている → チーン♪ → 「食べよう!」→ 空っぽ
仕事:約束を確認する → 実際の作業へ → 頭が次々の仕事へ → 「あれはもう大丈夫」になっている → 未完了発覚
電子レンジは笑えるが、こっちは笑えない。
でも、構造はまったく同じなのでは…と、気づいてしまった。
頭は「次」へ行きたがる
ここからは少し真面目な話。
人間の注意には限りがある。
やることが多く時間に追われていると、「今やっていること」より「次にやること」に注意が向きやすくなる。
人間工学やヒューマンエラー研究では、意図したことと実際の行動がずれてしまう「スリップ(slip)」というエラーが知られている。
「やろうと思っていたこと」は間違っていないのに、実際の行動の途中で注意がそれて、別の行動をしてしまう。
習慣化された行動に引っ張られる「キャプチャーエラー」も、その一つだ。
先を読んで動こうとすること自体は、もちろん悪いことではない。
ただ、忙しさや時間的なプレッシャーが重なると、誰にでもこうしたミスは起こり得る。
これは別に、能力が低いとか、不注意な性格だとか、そういう話ではない。
たとえば受験生でも、「あと何分だろう」「次の問題は何かな」と頭が先に行ってしまい、「あてはまるものを選べ」のはずが「あてはまらないものを選べ」を見落とす、なんてことが起きる。
能力の差ではなく、頭が一歩先に走ってしまっただけなのだ。
問題は、「次のタスクを考えること」と「今のタスクを終えること」が同時に起きたとき。ここで「始めた」「やった」「終わった」が頭の中で混ざってしまう。
だから今回の私は、「冷凍食品を電子レンジに入れる」を実際にはやっていないのに、頭の中では完了したことになっていた。
身体は「今」にいるのに、頭はもう「次」にいた。
「落ち着け」ではなく、無意識に仕事をしてもらおう
「気をつける」だけでは弱い。忙しいときほど、頭の中はもっと忙しいから。
① 「次にやること」を頭から外へ出す
「あ、○○さんに確認せな!」と思ったら、頭の中で抱え続けずにまずメモする。
「書いたから、今はこっち」と戻る。
頭の中のTODOを外に置くだけで、今の行動に使える注意が戻ってくる。
② 「完了確認」を型にしてしまう
「ちゃんと終わったかな?」と毎回意識するのではなく、「ここまでやったら完了」という型を先に決めておく。
メールなら:書く→宛先確認→添付確認→送信→完了
仕事なら:実施→記録→報告→完了
冷凍食品なら:包装を外す→冷凍食品を電子レンジに入れる→スイッチを押す→完了(これを忘れたのが今回の私である)
③ 「次へ行きたい無意識」を敵にしない
次へ行きたがる自分に気づいたら、「よし、次へ行こうとしてるな」とまず認める。
そのうえで「じゃあ、今の仕事をここまで終わらせてから行こう」と条件をつける。
無意識を止めるのではなく、無意識に一言条件を添える。これがコツ。
④ 時間がないときほど「小さな完了」を作る
忙しいと「全部終わらせなきゃ」となって、頭の中が渋滞する。だから「まずここまで」と小さく区切る。一つ終わる→次へ行く。結果的にこっちの方が速い。
失敗は「自分を責める材料」ではなく「自分を知る材料」
冷静に考えると、めちゃくちゃアホな話である。
電子レンジを開けたら、昼ごはんがない。
こんなことを堂々とブログに書いている自分もどうかしている(笑)
でも、このアホな失敗のおかげで、先日のビジネスでの失敗との共通点に気づけた。
自分を分析すると、「次へ進もうとする力」が強い。
これ自体は悪くない。
短い時間でも「これもやらな」「少しでも前に進もう」と動く原動力でもある。
ただ、強くなりすぎると、今やっていることを置き去りにしてしまう。
だからこれからは、「次へ行こう!」と思った自分に、こう声をかけようと思う。
「ええで。でも、その前に今の仕事を完了させよう」
電子レンジになら、「おい、まず冷凍食品を入れろや」である。
……こんな当たり前のことを、私は電子レンジに教わった(笑)
これを読んでいるあなたにも、一度問いかけてみてほしい。
「急いでいるときほど、頭が先に行ってないかな?」
頭が先に走ってしまうのは、誰にでもある。
だからこそ「落ち着け」ではなく、「今、ここまで終わった?」と確認してみること。
それだけで、次の失敗を一つ減らせるかもしれない。
それもまた、「はじめの一歩」を確実に前へ進めるための、小さな工夫なのかもしれないね。

