めちゃくちゃ話がうまい。
プレゼン資料もきれい。
説明も論理的。
声もよく通る。
なのに……なぜか、心が1ミクロンも動かない。
そんな経験、ありませんか?
反対に、話し方はそれほど上手ではないのに、「この人、ちゃんと自分のことを見てくれているな」と感じる人もいます。
この違いって、何なのでしょう。
私は、その一つに、性格や話術だけではなく、「ベクトルがどこを向いているか」も関係しているのではないかと思っています。
「自分軸」と「自分だけ」は違う
自分にベクトルが向きがちな人には、大きく2つのタイプがいる。
一つは、単純に自分の世界に没頭していたり、意図的に他人と距離を取っているタイプ。
悪気があるわけではなく、そういう性質だというだけの話なんですね。
もう一つは、堂々と意見を述べ、SNSでも精力的に発信しているのに、他人の意見や発信にはまるで興味がなく、一方通行になっているタイプ。
例えばSNSで、自分の考えを精力的に発信している人がいる。
堂々と意見を述べるし、自分の活動も積極的に紹介する。
でも、他人の発信にはほとんど関心を示さない。
もちろん、単純に自分の世界に集中している人もいるでしょう。
しかし、「自分が何を得られるか」「自分がどう評価されるか」ばかりに意識が向いている場合もあります。
営業電話などでも、「今、こういうサービスがありまして……」と、こちらの状況をほとんど確認しないまま話が続くことがあります。
聞いている側からすると、「そもそもあなたは、私に興味あるん?」となってしまう(笑)。
「自分軸で生きる」という言葉があります。
周囲の評価に振り回されず、自分の価値観で選択する。
これは、とても大切なことだと思います。
ただし、自分軸を持つことと、自分のことしか見ないことは同じではないんです。
自分の軸を持つことはもちろん大切。
でも、そこから一歩進んで、「あなたはどう思いますか?」と相手に関心を持って見ることも大切なのではないでしょうか。
他人に関心を持つ人がやっていること ~NLPの「ポジションチェンジ」と「ラポール」~
NLPの「パーセプチュアルポジション(知覚位置)」という考え方があります。
自分の立場だけでなく、相手の立場、さらに第三者の立場から同じ出来事を見てみる。
いわば、自分から相手へ視点を移動させる『ポジションチェンジ』です。相手がどう感じ、何を見て、何を求めているかを、一度自分の立場を離れて想像してみる。
この視点の移動ができるかどうかが、会話の質を大きく左右するのですね。
簡単に言えば、自分の立場だけで物事を見るのではなく、「相手の立場から見たら、どう見えるだろう?」と視点を変えてみることです。
例えばプレゼンなら、「自分はこれを伝えたい」だけではなく、「聞いている人は、今どんなことを知りたいのだろう?」と考えてみる。
すると、話す内容や順番が変わってくるかもしれないよ。
そして、相手との信頼関係をつくっていく考え方として、NLPではラポール形成という言葉も使われます。
ラポールは技術というより、「この人は自分を理解しようとしてくれている」という相手の実感の積み重ねから生まれるものなんですね。
相手の話を聞く。
表情やしぐさを見る。
相手がどんなことに関心を持っているのかを知る。
そして、必要なら質問する。
「この人のことを、もう少し知りたい」という気持ちがあるからこそ、こうした行動が自然に出てくるのではないでしょうか。
もちろん、相手に合わせ続ければいいという話ではありません。
何でも「そうですね」と同調するだけでは、相手はむしろ本音を話しにくくなってしまう。
大切なのは、相手を理解しようとする姿勢であって、自分を消すことではないんですよ。
自分の軸を持ちながら、相手の世界にも入ってみる。
私は、この往復がコミュニケーションには必要なのだと思っています。
相手の人生の一部になれるか
人との関係を考えるとき、「ベクトル」という言葉がしっくりきます。
自分のやりたいことがある。
それはいい。
でも、目の前にいる人と一緒に何かをするなら、
「この人の得意なことは何だろう?」
「この人から学べることは何だろう?」
「一緒にやるなら、どんな形がいいだろう?」と考えてみる。
そして、自分にできることで相手の役に立てそうなことがあれば、それを伝える。
すると、自分 → 相手 → 自分 → 相手
このように、ベクトルが行ったり来たりするようになります。
最初は「この人と何かできないかな?」と思っていただけなのに、気がつけば、
「この人の人生の中に、自分という人間が少し存在している」
そんな関係になっているかもしれません。
これは、単に人脈を増やすという話ではありません。
相手に興味を持ち、相手を知り、自分のことも知ってもらう。
つまり、相手への関心をうまく言葉や行動で伝えて、「この人と話していると、自分にとっても何か意味がある」と感じてもらえる関係をつくれるかどうか。
その積み重ねの先に、信頼や協力関係が生まれていく。
だからこそ、「自分を大切にする」と「自分だけを見る」は違う。
そして、「相手を大切にする」と「相手に合わせる」も違う。
自分の軸を持ったまま、ほんの少しだけベクトルを相手にも向けてみる。
それもまた、人との新しい関係をつくるための「はじめの一歩」なのかもしれませんよ。

